■うさぎさんに必要なもの
ローマは一日にして成らず。
ゴルフをやる人はお分かりだと思いますが、スウィングを一コマずつ
因数分解し、それをイメージしながら球を打ってもギクシャクした
ひどい打ち方になるだけです。
ここで肩を入れて、肘はこの位置だな、よしよし、トップはここで、
ダウンブローでは、こう腕を下し、その時、腰は先に回転してて、
左足体重でクラブをこっちに抜いてフォローはこんな感じだな!
なんて考えていたら、練習場ではいいかもしれませんが、コースで
は、きっとひどいことになるでしょうね。
潜在意識レベルにまで落としてこそ、体はスムーズに動くものです。
だからこそ、日々のトレーニングが大事です。
自然に体が動くレベルになって初めて「使える」ようになるのです。
仕事においては、成果を出すために目標を立てます。
しかし、ほとんどの場合、継続できず、最初に立てた志は、月末や
期末になってようやく思い出されるような具合で、結局、絵に描いた
餅。
どうしたらやり続けることができるのか?
成果につなげることができるのか?
戦略的アプローチにおいては、行動科学的なプロセスが有効です。
営業活動や事務作業レベルでは、数値目標を立ててPDCAを回し、
行動を継続してもらうような仕掛けが成果を出すことにつながります。
例えば、小学校の時に、手を挙げて発言すると、小さな丸いシール
を貼れる発言シートというものが私の通う学校にはありました。
シールを貼ることに喜びを感じ、ペタペタとシールがたまっていくこと
に快感をおぼえる。
そして、気づけば、いつの間にか、「発言する」という当初の目的が、
「シールを貼ること」にすり変わってしまっていたわけです。
メチャメチャ真剣になって、シールを貼るためにしょうもないことでも
発言をしまくっていました。
これはいわゆる動物調教用のエサと同じですね。
このように、人間の行動心理を考えながら、行動を強化させて習慣
化させていく「やり方」はたくさんあります。
しかし・・・
例えば、
お互いを尊重し合えるようなコミュニケーションスタイルを取りましょう。
お客様には当然のこととして、同僚や部下や上司に対しても、自分
が何をしてあげられるのかを考えましょう。
リーダーはフォロアーを成長させ、組織の成果を最大にするような
リーダーシップを発揮しましょう。
というように、コミュニケーションやリーダーシップを考えたときに、
単純に、行動科学的なアプローチの「やり方」だけではどうしても無理
が出てしまいます。
つまり、
~他者に対して何をしたら良いのか?~
~目的は何なのか?~
という考える力は、そこに存在しません。
効率ばかりを追い求めた「やり方」だけでは、人間関係を円滑にする
ための考える力が育ちません。
感謝や思いやり、そして共感や承認を得ることのできる仕組みや
仕掛けを社内でつくり、定着させ、機能させるためには、やはり、
「あり方」を意識したマネジメントが必要です。
「心」を重視したマネジメントです。
「心」は簡単にコントロールできるものではありません。
相手に喜んでもらいたいという「思い」はマニュアル化できません。
クレドで有名なリッツ・カールトンホテル。
私も最初に社長でもないのに理念をつくり、クレドを配り、社内に
なんとか浸透化させようと思いましたが、さっぱり社員たちの日々の
行動に体現されることはありませんでした。
何も変わらない。
上辺の言葉だけを並べ立てても何も始まりません。
リッツでは「ワオ・ストーリー」、つまり、お客様と社員との間に起こった
感動体験を共有することで、同時にほっこりした気持ちも社員同士で
共有しているそうです。
わが社でも、社員のワオストーリーを共有できる仕組みをつくって
います。
感情を共有する、つまり、共感を誘う。
感動は、相手の期待を上回った時にはじめて生まれます。
ということは、どうしたら相手の期待を上回ることができるのかという
意識を持たねばなりません。
相手のことに共感し、配慮する気持ちと考える力を育てるために
やり方だけではなく、感情や「あり方」を配慮できる社内風土をつくり
ましょう。
効率だけではなく、手間暇と愛情などの非効率さも考えましょう。
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■うさぎさんはエサだけでは生きていけません。さびしいと死んじゃいます。
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